米国の物価減速見通しが復活 S&P500最高値 半導体株が再浮上
アメリカの4月CPIは3月から伸び率が低下。市場予想通りの結果で金利の先高観を和らげた。S&P500や半導体株が上昇し、見通しが明るくなった。
アメリカでの物価上昇沈静化への期待が、株式市場の今後の見通しを明るくした。15日のS&P500種株価指数は1か月半ぶりに最高値を更新。また、半導体大手NVIDIA(エヌビディア)が最高値に迫るなど、半導体株も勢いづいている。株式市場を活気づけたのは、15日に発表された4月の消費者物価指数(CPI)。市場予想からの上振れがなかったことが安心材料となり、物価上昇圧力の弱まりを裏付けた。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを決断するまでには時間をとるとみられ、利下げ期待の先行きは不透明だが、しばらくは株式相場の明るさが続きそうだ。
アメリカのS&P500が1か月半ぶりに最高値を更新
15日のS&P500(SPX)の終値は前日比1.17%高の5308.15。3月28日の5254.35を超え、1か月半ぶりに最高値を更新した。ニューヨーク債券市場で長期金利(10年物米国債利回り)が4.356%まで下がり、4月9日(4.366%)以来の低水準になったことが追い風となった。長期金利は25日には4.7%台まで上がり、株式の投資先としての魅力を相対的に低める要因になっていた。
エヌビディアなど半導体株もそろって上昇
株式市場の見通しは人工知能(AI)ブームに押し上げられてきた半導体株でも開けている。22日に2024年2-4月期決算を発表するエヌビディアの株価(NVDA)は3.58%高の946.30ドル。4営業日続伸で、3月25日につけた上場来高値(950.02ドル)に接近している。このほか、半導体大手のアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)は4.25%高、ブロードコム(AVGO)も4.07%高となった。
4月CPIの伸び率は予想通りに3月から低下
株式相場の見通しを明るくしたのは、4月CPIの結果を受け、物価上昇が減速するとの期待が復活したことだ。総合指数の伸び率は前年同月比3.4%増で、3月の3.5%から低下。食品とエネルギーを除いたコア指数では3.6%となり、こちらも3月(3.8%)から減速し、2021年4月(3.0%)以来の低水準となった。総合指数とコア指数ともに、LSEGがまとめた市場予想と同じ数字だった。CPIは12月から3月まで予想を上回る結果が続いてきただけに、物価上昇率2%を目標としているFRBにとっては朗報だ。
また同じく15日に発表された4月の小売売上高の伸び率は前月比で横ばいの0%。3月の0.6%から低下し、市場予想の0.4%も下回った。自動車と自動車部品を除いたベースでは0.2%増で、こちらも3月(0.9%)から大きく減速している。いずれも需要の強さが物価上昇圧力として働く見通しが弱まっていることを感じさせる結果だった。
FRBの利下げ時期の見通しは引き続き9月が最有力
一方、今回の結果でFBRが利下げに向かうとの期待が急激に高まったわけではない。CMEグループのデータによると、投資家の動向から算出される9月までの利下げ確率は、日本時間16日午前11時段階で約54%。前日の51%程度から高まったとはいえ、利下げ期待が膨らんだとまでは言えなさそうだ。
ただ、FRBが物価上昇の抑制にてこずった結果として、利上げに追い込まれるとの懸念は和らいだといえる。ロイター通信によると、FRBのジェローム・パウエル議長は渡航先のオランダで14日、「現在までの経済指標に基づけば、次の金融政策変更が利上げになるとは思わない」と発言していた。1日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見と同じ趣旨を強調した形で、15日のCPIと小売売上高はパウエル氏の期待通りの結果となったようだ。
米国の金融市場で今後も金利が上昇していくとの見通しが弱まっていけば、米国株にとって好条件となりそうだ。3日に発表された4月雇用統計で非農業部門の就業者数の伸びが市場予想を下回ったことも物価上昇圧力の弱まりを裏付けており、S&P500や半導体株の上昇が勢いづくことも想定される。
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