債務上限一時停止法案が上院へ　最速可決は困難か　下院は31日に通過

米国の債務上限問題が正念場を迎えている。債務上限を一時停止する法案は5月31日夜に下院を通過した。しかし続く上院ではすでに複数議員が反対を表明しており、全員一致の場合に認められる最速での法案可決は難しいとみられる。ジャネット・イエレン財務長官が警告した米国債の債務不履行（デフォルト）の可能性がある5日を控え、上院通過が週末にずれ込む可能性もありそうだ。一方、法案の下院通過はデフォルト回避に向けた前進といえ、ドル円相場を円安ドル高に動かした。

債務上限一時停止法案の上院採決は最短で1日

ジョー・バイデン大統領（民主党）とケビン・マッカーシー下院議長（共和党）が合意した法案は31日に下院本会議で審議され、314対117の賛成多数で可決された。法案を提出したのは共和党だが、共和党からの賛成は149人に留まり、民主党から165人の賛成を得たうえでの可決だった。

上院での採決は最短で6月1日に行われる可能性がある。しかし米メディアによると、最短での採決は法案審議手続きの簡略化が全員一致で認められることが条件で、ハードルは高そうだ。共和党ではランド・ポール上院議員やマイク・リー上院議員が法案への反対を表明。民主党と統一会派を組む無所属のバーニー・サンダース上院議員が法案の下院通過後、ツイッターへの投稿で「法案に反対する」と明言した。

また、上院での審議で法案修正の機会が与えられるかどうかも、採決までのスピード感に影響を与える。ポール氏は修正条項提出を認めるよう求めているが、議員から提出されたすべての修正条項を審議することになれば時間がかかることは必至だ。仮に修正条項が可決された場合は、改めて下院で法案を可決せねばならない可能性も出てくる。

上院での議事進行には60人の賛成が必要

さらに上院の本会議での審議を打ち切って採決に進むまでには、定数100人のうち60人の賛成が必要だ。民主党のチャック・シューマー上院院内総務も、共和党のミッチ・マコネル上院院内総務も法案への賛成を呼び掛けているが、採決に進み、可決に至るまでは曲折もありえる。2日までに上院を通過しなかった場合は、週末に審議や採決が行われる筋書きも想定されているようだ。

ただし法案の下院通過で不透明感が解消に近づいたことは間違いない。31日の外国為替市場のドル円相場（チャート）は法案の下院本会議での可決が近づくにしたがって円安ドル高方向に動いた。連邦準備制度理事会（FRB）のフィリップ・ジェファーソン理事の利上げ一時停止発言が円高ドル安要因となる中で、相場を逆方向に動かした形だ。今後の金融市場でも、上院での審議の進展に左右される局面が出てきそうだ。

法案は債務上限の効力を2025年1月まで停止することなどを盛り込んだ内容。イエレン氏は5月26日付のマッカーシー氏あての書簡で、米国債のデフォルト回避のためには、「6月5日までに議会が債務上限を引き上げるか停止する」ことが必要だと警告している。