円高の加速に要注意

9月16-17日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後のマーケット動向を鑑みるに、目先、グローバル株式市場の不安定化は継続する可能性が高いでしょう。外為市場では今夏同様、円高が再び加速する可能性があります。

円高の加速要因①:不安定な状況が続く株式市場

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現在のグローバル株式市場は4つのリスク要因-①米国の金融引締めリスク、②ドル高リスク、③中国の景気減速リスク、④資源価格の低迷-に囲まれています。株価パフォーマンスを地域別で比較すると、今年6月以降、これらリスク要因が強く意識され投資家のリスク許容度が縮小していることを下の比較チャート①は示しています。
冴えない9月の米国雇用統計を背景に①&②のリスク要因が一時的に後退したことで、本コメント執筆時点のグローバル株式市場は反発基調にあります。しかし、中国の上海株式が急落した前の水準を回復するまでには至っていません。この主因は、③のリスク要因を背景とした世界経済全体の減速懸念です。この点は国際通貨基金(IMF)も6日に公表した最新の世界経済見通しで指摘しています。

4つのリスク要因に囲まれたまま10月を迎えたグローバル株式市場の動向はどうなるのか?比較チャート①のパフォーマンスが示す通り、リスク回避局面でも他の地域を上回っている米国株式がグローバル株式市場のトレンドを左右する可能性が高いでしょう。その米国株式市場は、8日以降から本格化する四半期決算の内容でトレンドが左右されるでしょう。4つのリスク要因を背景に冴えない決算内容が続けば、中国だけでなく米国経済の景気減速までが意識され(景気動向に敏感な米10年債利回りは節目の2.0%を割り込む状況が散見され始めている)、グローバル株式市場はリスク選好の先導役を失うでしょう。その結果、外為市場ではリスク回避の円高圧力とユーロ高圧力が強まるでしょう。ただし、下記「円高加速の要因②」も考えるならば、円高圧力がユーロ高圧力を凌駕する可能性が高いと思われます。

余談ですが、株式市場の歴史を振り返ると、悲劇的な大暴落は10月に集中していることがわかります。1929年のニューヨーク株大暴落然り、1987年の暗黒の月曜日(通称ブラックマンデー)然り。記憶に新しいところでは、世界金融危機を背景とした大暴落がいい例でしょう。2008年10月のダウ平均月間騰落率は14%以上、日経平均は実に24%近く暴落した経緯があります。

【比較チャート①:世界の株価パフォーマンス】
黄:米国 青:ユーロ圏 赤:アジア太平洋 緑:BRIC


円高の加速要因②:異次元緩和の優位性の後退

FOMC後の日独10年債の金利差(スプレッド)を確認すると、独金利への低下圧力が急速に強まっていることがわかります(日独スプレッドは拡大 / 比較チャート②)。スプレッド拡大の主因は、イエレンFRBの利上げ見送りによってさらに強まった世界経済の減速及びユーロ圏経済のデフレ回帰への懸念を背景に、欧州中央銀行(ECB)による緩和強化観測が急速に強まっているからです。

この観測は当然ユーロ相場にも影響しています。グローバル株式市場の不安定化がより鮮明となった8月以降のユーロ相場の動向を比較すると(比較チャート③)、ユーロ円の下落幅が他のユーロ相場と比較し拡大していることがわかります。これは株式市場の不安定化を背景とした円買いとECBの緩和強化が意識されたユーロ売りがタイミング良く合わさった結果、他のユーロ相場以上に下落幅が拡大したためです。
ECBが量的緩和に踏み切ったことで、現在の外為市場ではリスク回避局面において円とユーロが買われやすい通貨となっています。しかし、8月下旬の株式急落局面とFOMC後のリスク回避局面におけるユーロ円の動向を確認すると、円高圧力がユーロ高圧力を凌駕していることがわかります。日欧は金融緩和政策を実行中ですが、上記の日独金利とユーロ円の動向はECBの緩和強化観測を背景に異次元緩和の優位性が後退している、つまり2013年4月以降から円売りを支えてきた土台が揺らいでいることを示唆しています。世界経済とグローバル株式市場が混迷する中、黒田日銀総裁が今後も国内の景気見通しについて楽観スタンスを維持し続けるならば、上記の優位性はさらに後退するでしょう。そこに「円高の加速要因①」がタイミング悪く重なれば、ユーロ高圧力以上に円高圧力が強まることで10月は円が最強通貨となる可能性もあります。



【比較チャート②:日独金利動向(10年債利回り)】


【比較チャート③:ユーロ相場のパフォーマンス】

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