ドル高シナリオの「死角」

ベースシナリオはドル高継続

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ドル円は101.51(8月8日安値)を境にドル高/円安トレンドが加速し、109.74(9月29日高値)レベルまで急伸。実に8.0%を超える上昇率となりました。一方、ユーロドルは2012年11月以来となる1.26台へと下落すれば、米ドル相場のトレンドを示すドルインデックスは2010年6月以来となる86.00を視野に上昇し続けています。
一連のドル高けん引したのは米金利、特に2年債利回りの上昇です。そして、2年債利回りが上昇した背景にあるのが、イエレンFRBによる早期利上げの観測です。9月の連邦公開市場委員会(FOMC)ではこの早期利上げ観測をひとまず後退させることに成功したイエレン議長ですが、米国外のリスク要因(中国リスク、中東&東欧の地政学リスク)がくすぶり続け、且つ日欧の金利低下圧力の余波も受けて尚、直近の米2年債利回りの低下幅が限定的である事実は、イエレンFRBの宗旨替えにマーケットが神経質になっていることを示唆しています。
今週は、第4四半期に米国の経済が加速するかどうかを見極める上で重要な経済指標の発表が数多く予定されています。これら指標データが総じてファンダメンタルズ改善を示すならば、将来の金融政策を反映しやすい米2年債利回りには再び上昇圧力が強まり、ドル高トレンドをサポートする可能性が高いでしょう。

また、米金利だけでなく、以下の理由も中長期的にドル高トレンドをサポートすると考えられます。


理由1:金融政策のコントラスト(方向性の違い)

-緩和の「出口」に向かうイエレンFRBと緩和強化の「入口」に向かう日欧の立場が年後半から来年初めにかけてより鮮明となるでしょう。特に注目すべきは、FRB同様に欧州中央銀行(ECB)も大規模な国債購入策(QE)に踏み切るかどうかでしょう。FRBに代わる緩和マネーの新たな供給源としての役割をECBが担うことになれば、イエレンFRBにとって利上げに向けたハードルは一気に低下するでしょう。その結果、外為市場ではユーロ売り/ドル高圧力が一層強まり、ユーロドル主導でドル高トレンドが加速するでしょう。

 

理由2:米経常収支の改善

-アメリカの経常収支は改善傾向となっています。

・2005年:対国内総生産(GDP)比率で6.2%と過去最高を記録
・2014年Q2:対国内総生産(GDP)比率で2.3%まで低下

今後エネルギー革命の進展により、アメリカが資源の輸入国から輸出国になることが想定されます。それに伴い経常収支が改善し続ければ、それは潜在的なドル買い需要につながります。つまり、実需面でも中長期的にドル高トレンドが強まると想定されます。


どんなシナリオにも「死角」あり

しかし、どのようなシナリオを描いても、そこには必ず「死角」が存在します。
では、上述したドル高継続シナリオの「死角」とは?
筆者は米国(民主党)サイドの動向がそれになると考えています。そして9月下旬の米要人発言を鑑みるに、実際に米国サイドが早ければ10月にもこの「死角」を突いてくる可能性があることがうかがえます。
例えばルー米財務長官は先月下旬、主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の会見で「ユーロ圏と日本の成長は期待外れだ」と不満を述べ、ドイツには景気刺激策、日本には構造改革を強く要求してきました。
また、9月22日にはダドリー・NY連銀総裁が直近のドル高に対して懸念を表明してきました。米国の為替政策は財務省の管轄であるため上記の発言は異例であり、且つFOMCの議決権を常に有するNY連銀総裁の発言だけに、急激なドル高が米国のファンダメンタルズに与えるネガティブインパクトを意識するムードがFED内で強まっているのではないか、と思っていた矢先、9月25日にはロックハート・アトランタ連銀総裁が、ドル高が輸出に与えるネガティブインパクトについての懸念を表明してきました。

11月4日には米中間選挙が控えています。オバマ政権の求心力低下に伴い米下院では野党・共和党が過半数を維持することが確実視されています。ただでさえ与党・民主党劣勢の中、日欧の金融緩和を黙認し且つドル高加速をも許せば経済失策との非難が浴びせられ、上院でも共和党に多数を奪還されかねません。実際、そのような事態に陥れば、オバマ政権にとって残り2年の政権運営が一層厳しくなるでしょう。このような悪夢のシナリオを避けるために、ドル高/円安シナリオの筋書きを無理やり書き換えてくる理由と動機が米国(民主党)サイドにはあるのです。
焦点となってくるのは、10月中にも米議会へ提出される予定となっている半期為替報告書でしょう。先月のG20でのドル高黙認姿勢とは一転し、ドル高への懸念を表明し且つ他国の緩和政策(特に日欧の緩和政策)への批判をも盛り込んで来れば、ドル高シナリオに沿ってポジションを構築していた市場関係者はまさに「死角」を突かれるかたちとなるでしょう。その結果、ドルロング/円ショートを解消する動きが強まり、ドル安/円高へ逆回転するシナリオが浮上するでしょう。

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