焦点はイエレンFRBの動向と株式の反応

きっかけはFOMC議事録

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ドル円は104円台へ上昇し、ユーロドルが1.31台の攻防へシフトする等、ドル高トレンドが徐々に強まっています。
きっかけは、8月20日に米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した連邦公開市場委員会(FOMC、7月29、30日開催分)議事録でした。この中で『出席者の多くは、労働市場やインフレ率が予想よりも早いペースでFOMCの見通しに収束するようであれば、現在の想定よりも早期に(sooner than)金融緩和政策(ゼロ金利)を解除することが適切になる可能性がある』と指摘。FRB内で利上げに関する議論が活発化していることを浮き彫りにしました。継続的な低賃金傾向、そして低いインフレ率の伸びを理由に、マーケットではもうしばらく超低金利政策が継続するとの思惑が大勢を占めていました。それだけにFOMC議事録は『タカ派サプライズ』と捉えられ、将来の米金融政策の方向性を反映する米2年債利回りは反発し、米利回りの反発はドル高圧力を高めました。
米ワイオミング州ジャクソンホールで世界の中央銀行関係者を招いて開催された経済シンポジウムでのイエレンスピーチも、FOMC議事録の内容を踏襲する内容であった点を鑑みるに、早ければ9月16-17日に開催されるFOMCで、イエレンFRBがいよいよ金融政策の舵を転換させる可能性が高まったと言えるでしょう。

FOMC議事録

 

分かつのは米国株式市場

ただし、イエレンFRBが早期の利上げに踏み切るには、『労働市場の改善とインフレ率の上昇』という条件を満たす必要があります。よって、今後はこれらの経済指標の結果が早期利上げ観測を左右することになるでしょう。9月5日に発表される雇用統計(8月)や重要経済指標でファンダメンタルズの改善傾向が示されれば、9月のFOMCで実際にイエレン議長は緩和政策の終焉と利上げに向けた地ならしをしてくる可能性があります。実際に緩和スタンスから引締めスタンスへ方針転換した場合、債券市場では米金利への上昇圧力が強まりドル相場をサポートするでしょう。
しかし、イエレンFRBの方針転換が確認された際、外為市場で注視すべき点があります。それは、ドル高トレンドには『2本の道筋』があるということです。そして、どちらの道を進行するのか、それを左右するのは最高値圏で推移している米国株式市場となるでしょう。

 

-道筋1:リスク回避のドル高

現在の米国株式は2つの期待、つまり『ファンダメンタルズの改善期待』と『超低金利政策の長期化期待』という2本の柱に支えられています。
そのうちのひとつ、『超低金利政策の長期化期待』の柱が崩れ米国株式が反落した場合、グローバル株式市場全体の不安定化をもたらすでしょう。グローバル株式市場がそのような状況に陥れば、ドル高はドル高でも『リスク回避のドル高』となるでしょう。この局面では、『株安+米金利上昇』を背景に資源国通貨や新興国通貨でドル高トレンドが鮮明になるでしょう。また、ユーロ圏の脆弱なファンダメンタルズ、くすぶり続けるロシア・ウクライナの地政学リスク、そして米欧の金利差拡大等を背景に、対ユーロでもドル高トレンドが加速すると考えられます。
しかしドル円に限っては、グローバル株式市場の下落圧力が米金利上昇を背景としたドル高圧力を上回ることで、むしろ下値をトライする展開を想定します。他のストレート通貨ペアでの下落(ドル買いによる下落)もクロス円の下落要因となり、その影響がドル円に波及する点にも注意が必要でしょう。『リスク回避のドル高』とは、いわば『バラつきのあるドル高』と言えます。

-道筋2:リスク選好のドル高

一方『超低金利政策の長期化期待』という柱がなくなっても、『ファンダメンタルズの改善期待』が支柱となり米国株式が現在の高値圏の維持に成功し続ければ、『リスク選好のドル高』となるでしょう。この局面では『株高+米金利上昇』を背景に、ドル円を含め他のストレートでもドル高トレンドが鮮明となるでしょう。『リスク選好のドル高』とは、いわば『全面的なドル高』の局面へ突入することを意味します。
このような展開となれば、-中期的にドル円は年初来高値105.44の更新、ユーロドルは節目の1.3000の下方ブレイクの展開を想定すべきでしょう。
このように、イエレンFRBの方針転換は単にひとつのドル高を誘発するわけではありません。米国株式市場の動向次第で、ドル高トレンドには『2本の道筋』があるということを常に頭に入れておく必要があるでしょう。


2本の道筋

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