ドル安 VS 英国リスク

Market Overview

9日の海外外為市場はユーロ売りの展開となった。ドラギECBによる金融緩和政策、英国のEU離脱リスクそしてスペインの再選挙を背景に独10年債利回りは一時0.023%まで低下し、過去最低水準を更新。独連邦債をはじめとした欧州債の利回り低下は金融セクターの収益圧迫懸念を想起させ、且つこの日の原油価格(WTI7月限)が軟調地合いとなったことで、金融&資源セクターが欧州株の下落を牽引した。これら欧州市場の動向は、ユーロ売り圧力となって外為市場へと波及。ユーロドル(EUR/USD)は1.1305レベルまで急落する展開となった。
一方、円相場は売り買いが交錯する展開となった。リスク回避からドル円(USD/JPY)は106.25レベル、ユーロ円(EUR/JPY)は120.32レベルまで下落する局面が見られた。しかし、米株の下落幅が縮小するに伴いドル円(USD/JPY)も反発基調を強め107円台を回復すると、クロス円もこの動きに追随し、一転して円売り優勢の展開に。ユーロ円(EUR/JPY)も121円台の回復に成功した。

米債券市場では、欧州債の下落、原油価格の反落そして欧米株式の軟調地合いを背景に各ゾーンの利回りが低下。金融政策の方向性に敏感な2年債利回りは一時0.7590%と先月16日以来の水準まで低下する局面が見られた。

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Analyst's view

昨日のドルインデックスは陽線が出現。しかし、この反発の主体は「ドル買い」ではなく「ユーロ売り」である点を考えるならば、単なる「調整」と判断すべきだろう。
9日のグローバル市場の動向で筆者の興味を惹いたのは、ある二つの動向である。ひとつは、昨日のドル買い戻し(調整)のタイミングで海外株式が総じて軟調地合いとなったこと。これは、今年3月以降(FOMC後)からその傾向が鮮明となった「ドル安=株高」「ドル高=株安」トレンドが継続していることを示唆している。もうひとつは米株の強さだろう。この点は以下の比較チャートで一目瞭然。日欧株とのパフォーマンス乖離が拡大傾向にあり、且つ世界株式のパフォーマンスをも上回っている米株が崩れていない状況(=リスク選好の先導役を果たしている状況)は、様々なリスク要因を抱えながらもグローバル市場が年初のような混乱状態に陥ることを防ぐ防御壁となっている。防御壁の土台は「ドル安」だが、その土台が崩れるならば、それは来週の連邦公開市場委員会(FOMC)後の可能性が高いだろう。だが、英国のEU離脱懸念とユーロ圏への波及リスクを考えるならば、今会合でイエレンFRBが「利上げ」を選択するのは現実的なシナリオではない。焦点は「7月利上げ」シグナルの有無だが、それすら見送るならばドル安はさらに進行し、意識されるであろう英国のEU離脱懸念の相殺要因となり得る。

円相場は引き続き株式にらみの展開となろう。この点は、米株の下落幅縮小に伴う昨日の円売りが示唆している。サポートポイント106.50を下方ブレイクしたことで、ドル円(USD/JPY)の下限は106.00へと下方修正し、中心レンジを106.00-108.00と想定したい。目先の株式市場は「ドル安(リスク選好要因)」vs「英国のEU離脱懸念(リスク回避要因)」間のせめぎ合いを背景に神経戦となろう。それに伴い円相場も上下に振れる展開が想定されるが、筆者が注目している通貨ペアはポンド円(GBP/JPY)よりもユーロ円(EUR/JPY)である。英国のEU離脱懸念の影響を最も受け易く且つチャート上ではディセンディング・トライアングル(下落基調)を形成しながら心理的節目の120.00を視野に下落中。ドラギECBによる金融緩和政策、それに伴う独金利の低下、そしてドル安を背景に資源国&新興国通貨への買い圧力強まっている点も考えるならば、英国のEU離脱懸念(=ユーロ売り要因)を背景とした株安局面(=円買い要因)では、下落幅が拡大し易く且つ円相場全体に与える影響力が最も大きい通貨ペアと言えるだろう。


【比較チャートチャート】緑:米株 黄:世界株式 青:ユーロ圏 赤:日本

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【ユーロ円日足チャート】

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