中国リスクとドル高

Market Overview

米労働省が発表した6月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が28.7万人増と市場予想の17.5万人を大きく上回る内容となった。しかし、5月のそれは衝撃的な3.8万人増から1.1万人増に下方修正され、且つ賃金の上昇率も0.1%(前月比)と市場予想の0.2%に届かず。強弱まちまちの内容に8日のNY市場の反応もまちまちとなった。

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Analyst's view

利上げ観測高まらず

8日のドルインデックスも見事に200日MAで上値がレジストされた(下図日足チャート青ライン)。上記の通り6月の非農業部門雇用者数こそ強い内容だったものの、賃金の上昇率が市場予想を下回るようではイエレンFRBに早期の利上げを促すインパクトがあったとは言えない。また、「BREXITショック」の連鎖の環が今後どのようなかたちで広がりを見せるのか、この点を見極めることがイエレンFRBの重要ミッションとして急浮上している現状も考えるならば、目先、利上げ期待を背景としたドル高には期待できないだろう。

 

それでもドル高には要警戒

ドル高観測の後退は8日の米株高と2年債利回りの低空飛行(0.61%台で抑制された)状態が示唆している。今年3月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降、ドル安がリスク選好の先導役となっている状況は既に指摘済み。よって、ドルインデックスの上値が抑制されている状況での米株高に違和感はない。

だからと言って、今後も「ドル安=株高」の状況が継続すると判断するのは早計だろう。「BREXITショック」の連鎖の環がEUへ広がれば、カーニーBOEは年内2回の利下げ、そしてドラギECBも金融緩和の強化に踏み切らざるを得ないだろう。欧州の景気後退懸念と金融緩和は欧州通貨の売り圧力をさらに強め、その受け皿として米ドルが選好される局面が2016年後半は多く散見されよう。ただ、これ(欧州通貨売り)のみではドル高トレンドが形成される可能性が低いことはすでに指摘済み。しかし、欧州通貨売りに加え資源・新興国通貨売り圧力が強まるならば、本格的なリスク回避のドル高へシフトするだろう。
 

BREXITショック」→「EUショック」→「中国ショック」という連鎖の環を警戒

上記の点を見極める上で今後注視すべきは、中国の指標データとなろう(今週は同国の重要指標データが13・15日に発表される)。2015年の中国貿易統計を確認すると、総額は前年比8%減の3兆9586億ドル。6年ぶりの減少となったが、その主因のひとつが、最大の貿易相手国であるEU向け輸出の鈍化だった。現在、中国は過度の人民元安を抑制しながら自国通貨安政策で輸出拡大を目論んでいる。内需縮小の悪影響を少しでも相殺しようとする苦肉の策ともいえるが、「BREXITショック」→「EUショック」によりEU向け輸出の鈍化がさらに鮮明となれば、同国の内憂(内需縮小)・外患(輸出減少)を意識した投資家は人民元への投機アタックを開始する可能性がある(昨年12月の人民元急落は投機アタックの可能性あり)。

「BREXITショック」→「EUショック」→「中国ショック」という連鎖の環の状況に陥れば、株式市場だけでなく国際商品市況、特に原油価格にも下落圧力が強まろう。目下、原油価格が1バレル=50ドル台でレジストされている主因は、米国のリグ稼働数の増加にある。この状況は「50ドル台=米企業にとって採算が取れるライン」であることを示唆すると同時に、中国の需要が減少する中では「過剰供給ライン」の意味合いも持つ。原油価格の下落は資源&新興国通貨売り圧力を強めよう。「欧州通貨売り&資源・新興国通貨売り」が重なれば「リスク回避のドル高」圧力が強まり、それがさらなる「株式&原油価格下落」の圧力を強めよう。そして円相場では「クロス円総崩れ」となり、最終的に「ドル円90円台の攻防」となることが想定される(=「欧州通貨売り&資源・新興国通貨売り」→「リスク回避のドル高」→「株式・原油価格下落」→「クロス円総崩れ」→「ドル円90円台の攻防へ」)。ドル高は円高要因として引き続き警戒したい。


【ドルインデックス日足チャート】青ライン:200日MA

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