焦点は「ギリシャ6月危機」の行方と米指標データ

アナリストの視点-週前半はギリシャ6月危機、週後半は米指標データが焦点

ユーロとギリシャ

ギリシャのチプラス首相は27日、国際債権団(EU・ECB・IMF)が金融支援の条件として提示した構造改革案の是非を問う国民投票を7月5日に実施すると宣言し、ギリシャの議会(定数300)は28日未明、国民投票実施を賛成多数で承認した。しかし、欧州連合(EU)側は27日のユーロ圏財務相会合で「6月30日に今の金融支援は期限を迎える」(デイセルブルム議長)とし、6月末の金融支援の期限延期を拒否。また、国民投票でEUの構造改革案が否決された場合は、7月以降も予定されている債務返済が不可能となり、ギリシャのユーロ圏離脱(Grexit)が一気に現実味を帯びてこよう。
一時後退していた「ギリシャ6月危機」が再び台頭してきたことで、週明けの外為市場ではユーロ売りが加速。EUR/USDは1.10を割り込み安値1.0953レベルまで急落する局面が見られた。一方、EUR/JPYも133.75レベルまでユーロ安・円高が進行。USD/JPYも連れ安し122円前半で推移したまま、本日の東京時間を迎えている。

週前半は、「ギリシャ6月危機」の行方とユーロ相場の動向に注視せざるを得ないだろう。ギリシャの債務不履行(デフォルト)とユーロ圏離脱(Grexit)の現実味が急速に増してきたことで主要な欧州株式市場がリスク回避優勢となれば「質への逃避」が加速し、マネーは独連邦債へ一気に向かうことになろう。先週より米利上げ観測が再び台頭しているタイミングで独連邦債の上昇(=金利低下)トレンドが鮮明となれば、米独金利差拡大観測(=独金利低下率>米金利低下率)を背景にEUR/USDは日足の一目/雲を下方ブレイクする展開が想定される。ユーロクロスも同様の展開となろう。
一方、円相場は円高優勢の展開となろう。日欧緩和強化を背景に米債券はただでさえ利回りの面で投資妙味が増している。このタイミングで欧州株安が米株の不安定化を誘発すれば、安全資産である米債券への投資妙味がさらに増そう。「欧米株安+米債券上昇(=金利低下)」のダブルパンチによりUSD/JPYは122.00レベル(直近高値からの38.20%戻し)を下方ブレイクする展開が想定される。クロス円はEUR/JPYが円高のけん引役となろう。

だが、先週も指摘した通り、「ギリシャリスクを背景としたユーロ売り」は長く続かないだろう。現在、ギリシャ国債を保有するのは欧州中央銀行といった公的機関であり、民間投資家(=大手金融機関)が保有していた2012年までの時とは状況が違う。一方、欧州マーケットでは、ギリシャ情勢に関する情報が錯綜し続ける中でもイタリアやスペインといった南欧利回り(10年債利回り)は2.0%台前半で低位安定している。4月以降上昇基調へ転じているが、これは独金利の上昇に追随した動きである。また、欧州株式市場の下落も年初からの上昇率を考えるならば、4月以降の下落局面は調整の範囲内と言えるだろう。膨大な経常黒字(=潜在的ユーロ買い圧力)もユーロ相場のサポート要因となろう。

中長期的なユーロ安要因として意識すべきは、やはり「米欧金融政策のコントラスト(=方向性の違い)」だろう。週後半(7/1~2日)は9月の米利上げの試金石となる重要指標データの発表が相次ぐ。特に注目すべきは米雇用統計(6月)だろう。目下、米利上げハードルとなっているのは低インフレ状態。これを克服するには、持続的な労働市場の改善が必要であるとイエレンFRBは繰り返し述べている。特に注目されるのは賃金動向だろう。5月の平均時給は前月比で0.3%増、前年比で2.3%増と堅調な伸びを示した。この状況がトレンド化していることが確認できれば、米経済のエンジン役である個人消費の拡大と景気回復スピードが加速しよう。結果、9月の米利上げと「米欧金融政策のコントラスト」が再びマーケットの主要テーマとして浮上しよう。
一方、円相場は何度も指摘している通り株式動向次第だろう。EUR/USDを震源地としたドル高はドル相場のサポート要因(=リスク回避のドル高要因)だが、株式市場が崩れるならばクロス円での円高圧力がドル高圧力の相殺要因となろう。米国マーケットで「米株高維持+金利の緩やかな上昇」という共存関係が成り立たない限り、125円台への再上昇とそのレベルの維持は難しいだろう。

本日焦点-リスク回避の震源地としての欧州マーケット

上記の通り、ギリシャ議会は欧州連合(EU)が提示した改革案受け入れの是非を問う国民投票の実施を賛成多数で承認。しかし、肝心のEU側はギリシャ側に「最後通牒」を突き付け、「ギリシャ6月危機」回避のデッドラインが迫る中、国際債権団とギリシャ政府との溝は埋まるどころか深まっている。「ギリシャ6月危機」が、今そこにある危機として再浮上してきたことで、本日の外為市場ではユーロ相場が独歩安となる可能性があろう。

また、主要な欧州株式市場が混乱すれば、そのネガティブインパクトが米株式や主要な新興国株式に波及することで、外為市場ではリスク回避のドル高&円高の展開が想定される。USD/JPYはクロス円での円高により上値の重い展開となろう。チャートポイントは下記「Technical analysis highlights」を参照されたし。

Technical analysis highlights

USD/JPY

レジスタンス 123.65:一目/基準線(赤ライン) 123.56:5日MA(青ライン)
サポート

122.04:リトレースメント38.20%

121.04:89日MA(緑ライン)

本日早朝、目先のサポートポイント122.50を一気に下方ブレイク。122円台(リトレースメント38.20%)の維持が焦点として浮上してきた。このサポートポイントをも破る展開となれば、次のターゲットとして浮上するのは、121円前後で推移している89日MAと120円を挟んで展開している日足の一目/雲となろう。
一方、上値は5日MAと基準線が密集する123.50-60レベルまで反発できるかが目先の焦点となろう。

EUR/USD

レジスタンス 1.1128:一目/基準線(黄ライン) 1.1010:89日MA(赤ライン)
サポート 1.0965:日足の一目/雲の下限 1.0819:5/27安値

ギリシャリスクを背景に週明けはギャップオープン(安値1.0953)。執筆時点で4月13日安値1.0520を起点としたサポートラインの遥か下で推移していることから、目先の焦点は、5月から6月にかけての高安76.40%戻しと同水準にある日足の一目/雲の下限での攻防となろう。これらテクニカルポイントをも破る展開となれば、短期的に5月27日安値1.0819を視野に下落幅が拡大する可能性があろう。
一方、上値は89日MAの突破が目先の焦点となろう。

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